私は何も怖くないの まだ知らないことばかり

すごくきらいな英語の授業があって、
サウンドオブミュージックの台本を読み込んでいく単純明解な文系講義なんだけど、
とにかく先生がちょっとしたことでもいちいちツッコんでくるの。
台本を訳すだけの講義だから学生が書いたレポートの訳を読み上げながら答えを導き出すっていう単純なものなんだけど
ちょっと登場人物の読み方間違えたり、訳せなくて空欄のまま提出したらもう、すぐ授業そっちのけで永遠にツッコんでくるの。
重箱の隅をつつくように。
そりゃ先生も翻訳の仕事に誇りを持ってやってるんだろうけどさ、
いくらなんでもそりゃないよって思ってたわけ。
んでこの前、この先生きらいって頭きてたから一応真面目な訳をしつつ、
適当な訳を巧みに織り混ぜながら支離滅裂なレポートを提出したの。
長嶋茂雄が見たら「う〜んどうでしょう」って首をかしげそうなぐらい馬鹿な訳満載の。
余りにも適当な訳だから当然怒られるだろうなって、
ちょっと期待しながらも内心ビクビクしてた部分があったけど、
確かにいちいちツッコんではくるけど訳を読み上げながら先生ちょっと笑ってんの。
いやいや違うでしょとかこれまた強引に訳してますねーとか。
そしたらなんだかよくわかんないけど
さっきまでの嫌悪感はどこへやら、だんだん僕、嬉しくなっちゃったの。
僕が意図して書いたおかしな文章をいちいち拾ってツッコんでくれるからさ。
先生がラジオのパーソナリティーに見えてさ。
凄く楽しくなっちゃって。
いつもなら苦痛でしかない90分がすごく短く感じて
きっとこの先生いい人なんだなーって印象が変わった。
だって明らかに適当な訳を書いてたら、
普通は怒るなりのけるなりするだろうに、
全く怒りもせず一つの答案として読み上げてツッコんでくるんだよ。
そしたら途中でそんなレポートを出した自分がすごくはずかしくなって、
先生に申し訳なく思えてきてさ、
次からはきちんと真面目なレポートを出そうって思ったんだ。

このことから、僕はこういう教育もあるんだなと一本取られた気分になった。